安河内 博一安河内 博一
安河内 博一安河内 博一
プロジェクトの概要と現在の仕事内容
スマートフォンの普及により、必要とされるデジタル施策、その展望とは。

手軽さや手元に届くスピードの速さから、日常的にネットショッピングを利用する人が増えている。購買スタイルの変化により、企業がSNSアカウントを作り、消費者と交流するケースも珍しくない。企業と消費者との関係性も一方的な情報発信から双方向コミュニケーションへと変わりつつある。こうしたデジタル施策を目的として2017年6月に設立されたのが、グループ本社のデジタルマーケティング室だ。12月のサイトローンチやSNSアカウントの開設を皮切りに、本格的に始動した。今回は、そのプロジェクトリーダーを務める安河内に施策にかける思いと展望を語ってもらった。

プロジェクトの背景と当時の役割

最初に、このプロジェクトが始まった背景と当時の役割について教えてください。
スマートフォンの普及率が急速に上がっていることにより、EC市場(ネット通販市場)も急成長しています。こうした背景に加えて、国内大手ECサイトで販売した当社のグループ会社であるイニシオフーズのおせちの売り上げがアップしたこともきっかけの一つです。そこで改めて、デジタルマーケティング室発足に向けた具体的な話が進められたと聞いています。プロジェクト発足当時、私は日清製粉ウェルナの関西営業部にいました。実は、1993年に入社して以来ずっと日清製粉ウェルナに在籍していて、6月にグループ本社に来たばかりなのです。
デジタルマーケティング室への配属が決まった時の心境はいかがでしたか?
「まさか、今ごろ?」でしたね。日清製粉ウェルナでは、営業、広告宣伝・販促、開発を経験させていただきました。商品開発に所属していた当時、研修に行かせていただき、研修後のレポートとして、会社への提言を提出する機会があったので、ECをもっと強化すべきという提言書を提出したこともありました。その後、営業現場に戻り、首都圏営業部で大手ECサイトの担当をしていた頃にわかったのは、私が思っていた以上にECを利用する人が多いということ。売れる商品も実店舗とは異なります。スーパーなどではパスタやフラワーが売れるのに対し、ある大手ECサイトでは一番売れていたのが「パン専用小麦粉2kg」。ECとリアルでの売れ筋商品が異なることを身をもって経験し、改めてECを強化する必要性を感じました。
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日清製粉グループのデジタル施策の狙い

グループ全体をあげてのデジタル施策。狙いを教えてください。

デジタルマーケティング室には、ミッションが二つあります。一つ目は、お客様に好きになってもらい、当社グループの商品を買い続けてもらう仕組みを作ること。二つ目は、大手ECサイトにおける売り上げ拡大です。そのために、各事業会社の施策に連動してスピーディにデジタル施策でサポートできる体制を整える必要があったのです。

二つのミッションを遂行するために、どう動かれたのでしょうか?
まずは、さまざまなSNSサービスの公式アカウント取得に向けた行動を開始しました。アカウントを立ち上げるためのルールを改定し、会社から承認をいただきました。同時に、当社グループのHPの具体的な改善点を把握するために、外部業者と協働し、現状の課題の洗い出し、課題解決に向けた取り組みを開始しました。
現状分析により、明らかになった課題を聞かせてください。
一つ目に上がった課題が、当社グループのHPのデザインとユーザビリティです。2014年ごろを機に、スマートフォンからのHPへのアクセス数がPCを上回りました。にもかかわらず、PC画面をそのままスマートフォンに表示している状態でした。現在は、使用しているデバイスの画面の大きさによって表示される画面が最適化されるような仕組みへの変更を行っています。そしてもう一つは、ユーザビリティの改善です。HPで商品を検索する時に「常温」「冷凍食品」と項目を表示していましたが、「常温」と聞いても消費者の方は商品に結びつきにくい。そこで、「天ぷら粉」「パスタ」など、カテゴリ別の表示方法への変更など、お客様目線のHP作りを目指しています。
デジタルマーケティングだから実現できることを教えてください。
これまでもグループ会社ごとにデジタルマーケティングを担当する部署はありました。しかし、完全に縦割りで、事業会社をまたいだ情報共有もされていなかった。今回目標としているのは、各事業会社が保有するお客様データの一元管理です。例えば、一人のお客様が当社グループの複数商品を購入した場合、これまでは「小麦粉を買う人」「ペットを飼っている人」「健康に気を使う人」と一面ずつの見え方でしかありませんでした。これらの情報を集約することにより、お客様像が立体的に見えるようになります。結果的に、ご提案できる商品も増えますよね。
広告の打ち出し方も変わりそうですね?
顧客データを蓄積することにより、購買時期や商品を把握できます。その結果、個別に広告を送れるようになります。例えば、小麦粉の購入サイクルの購買データを分析することで、小麦粉が使い終わりそうなタイミングで広告を送ります。絶妙なタイミングで連絡が来ると、次第にお客様も当社グループを意識し始める。顧客に好きになってもらう仕組みが少しずつできてくるのかなと思っています。
消費者に好きになってもらうための仕組みとして、現在進めている施策はあるのでしょうか?
リアルイベントも実施しています。日清製粉ウェルナのパスタソースブランド「青の洞窟」では、昨年から、2年続けて「青の洞窟SHIBUYA」と名付けたイルミネーションを行い、多くの人にリアルイベントを通した「ブランド体験」をしていただきました。今後も日清製粉グループの取り組みをSNS等で発信していき、お客様に体験していただく機会を増やしていければなと思っています。リアルイベントで撮影した画像をハッシュタグ「#」でシェア、投稿すると特典がもらえるなど、リアルとデジタルを組み合わせた取り組みも考えていきます。
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改めて感じる、日清製粉グループ本社の魅力

このプロジェクトや普段の仕事を通じて改めて感じた日清製粉グループの魅力は何ですか?
企業のブランド力の強さです。社名はもちろん、スーパーに行けば小麦粉やパスタなどの当社製品が陳列されています。コロッケ、天ぷらの衣やパン、ケーキの材料など、お惣菜やスイーツにも当社ブランドが使われることが多い。意外と知られていませんが、化粧品にも当社の粉体技術が使われているんですよ。目に見える・見えないに関わらず、お客さまの生活に常に寄り添っている企業なんだなと感じています。
消費者にとって安心感のある存在ということですね。
例えば、当社HPのアクセス解析をして面白かったのが、レシピ検索での一位が小麦粉からのうどんの作り方だったこと。天ぷらやお好み焼きのレシピも比較的アクセス件数が多かったです。お好み焼き粉や天ぷら粉は製品としてあるので、お好み焼きをふんわりと焼く方法や天ぷらをサクッと揚げるコツを知りたいのかもしれません。粉について知りたい時は、日清製粉グループのHPに来たら全てわかるような存在でいたいですね。
レシピの見せ方も工夫されているのでしょうか?
動画でわかりやすく紹介できる取り組みを考えています。特に粉ものだと、「耳たぶくらいのかたさ」や「サックリ混ぜる」など、テキストや写真だけで説明されてもわかりにくい。うまく作れずに失敗すれば、二度とHPを利用してもらえなくなる可能性もあります。実際に、レシピページの滞在時間の短さやレシピページを見に来たが、すぐに別サイトへ移動してしまう比率(直帰率)の高さは課題の一つでした。今後は、お客様に継続して使ってもらえるHPを目指しています。
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プロジェクトの未来、今後の目標

最後に、今後のプロジェクトの行方や目標を聞かせてください。
現在、40代〜60代の方のスマートフォンのライトユーザーが増えています。日本の人口推移から考えると、10年、20年後のこの年代が将来的なメインターゲットになっていくと考えられます。その時になってから行動を開始していては、競合に取り残されてしまう。将来を見据えて、今何ができるかを考えていかなくてはいけません。そのためには、顧客データの蓄積や分析をして、知見を広めていく必要があると思っています。また、ウェブを使った海外向けの施策も視野に入れています。 “お客様のそばにいつもある”当社グループのブランドを神田から世界に向けて発信したいと考えています。
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